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事実婚って何?事実婚のメリットとは?

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事実婚に関する契約とは?

弁護士の松坂です。
最近、事実婚についての取材を受け、それが記事化されました(記事はコチラ)。
その他にも、周りや相談者には事実婚の方が増えてきたというのが印象です。
弁護士仲間でも事実婚を選択する人が多い印象です。

では、「事実婚」って何なんでしょうか?
結論を端的に言えば、婚姻届けを出さないまま結婚しているという状態のカップルを指します。「内縁」とも呼ばれます。
このコラムでは、事実婚とは何か・法律婚(婚姻届けを出す結婚)との違いはあるのかを解説していきたいと思います。

また、次回では婚前契約(夫婦財産契約)について解説します。


定義

事実婚(内縁)とは具体的にどういったものを指すのでしょうか?
法律で規定された定義があるわけではないですが、「婚姻の実体を有する男女間の関係であり、婚姻の届出を欠くために、法律上の婚姻が成立していないもの」(窪田充見「家族法ー民法を学ぶ〔第4版〕」135頁,2019.12.15,有斐閣)と言われたりします。

分解して考えると、
社会的に夫婦と認められる生活を営んでいながら
婚姻届けを出していないために法律上の婚姻とは認められないもの

を指します。

日本の法律は届出主義と言って、婚姻届を役場に届出でるということで初めて認められるという制度を採用しています。そのため、届出がない(②)以上は法律で規定されている婚姻関係とは認められないのです。

なお、パートナーシップという言葉があります。
パートナーシップが学術的にどういう立ち位置の言葉であるかについて画一的な解釈を見つけられなかったのですが、感覚的には、これまで法律上の婚姻・内縁関係が「男女」の関係を前提にしてきたのに対し、昨今同性カップルを代表とする従来の男女夫婦以外のパートナー関係を指す言葉として利用されているように思えます(あくまで感覚的な私見。)。


法律婚と事実婚との違い

法律婚と事実婚とはどんなところが違うのでしょうか。

まず定義でもあるように、婚姻届けを出していないところが大きな違いになります。

次に大きな点は、姓(苗字)です。現在の法律では夫婦別姓は認められていないため法律婚だと夫婦のどちらかが改姓が必要になります。事実婚では別姓のままとなります。

子供の親権ですが、法律婚は共同親権となります。
しかし、事実婚の場合は原則母のみが親権を持ちます(父は認知が必要になります)。父親に親権を取らせたい場合には裁判所で親権者変更の手続きをとることになりますが、その場合には父の単独親権となります。いずれにせよ事実婚では単独親権となります。
ただし、これは共同親権に関する民法改正で変わるとされています。改正となれば父母の協議によって共同親権が選択できます(改正案民法819条4項)

相続についても大きく異なります。
法律婚はどちらかの死亡に伴い相続権が配偶者に生じますが、事実婚では相続権が生じません。事実婚の場合であって、他方に相続をさせたい場合には遺言による遺贈や生前贈与が必要です。

関係の解消についても異なります。
どちらも離婚・事実婚の解消においては合意ができれば問題ありません。
しかし、法律婚は、一方的な破棄というのは裁判離婚でなければできず、離婚事由があると認められる必要があります。
他方、事実婚の場合は、一方の関係解消の意思表示で関係解消ができます。ただし、この場合でも損害賠償や財産分与などの清算処理は必要です。

それ以外の法律的な扱い、例えば、婚姻費用請求や、関係解消時の財産分与も認められます。その他、同居協力義務(民法752条)、婚姻費用分担義務(760条)、日常家事債務の連帯責任(761条)、貞操義務(770条)などの規定は、事実婚であっても適用されます。

また、最近では行政手続きや私生活上の取り扱いについて法律婚と事実婚とでの差異は縮まってきました。法律婚と異なり事実婚であることを示す必要があるので少し面倒ですが、それでも同じように扱ってくれるサービスが増えました。

ただ、配偶者控除・配偶者特別控除・青色事業専従者給与といった控除の適用がないものもあるため、注意が必要です。


事実婚の手続き

事実婚を選択した人はどのようなことをしておくべきでしょうか。
法律婚は、婚姻届けを提出するという行為を行ったときからスタートとなります。
しかし、事実婚ではそれがありません。

事実婚として認められるかどうかは、当事者に夫婦共同生活関係を成立する旨の合意があり、かつ、夫婦共同生活の実態が存在していることが必要です。
つまり、夫婦となる合意を行ったうえで、夫婦としての生活を送っていれば事実婚と認められるということになります。

しかし、そうするといつから事実がスタートするのか不明確な気もします。
法律婚では(多くの場合)婚約をして、その後婚姻届けを出すわけで、婚姻届けを出した日から法律婚が成立しますので、(法的には)この日がスタートだとバシッと定まります。

事実婚で決まった形式があるわけでは無いです。
一般に行われている例としては住民票の記載を「妻(未届)」「夫(未届)」と記載することで婚姻届けに替えているということが挙げられます。
また、事実婚に関する契約書を締結するという方法もあります。
契約書において「双方の自由な意思決定に基づき、社会通念上の結婚と同等の関係を築くことを合意し、家族として支えあって生きていく」という内容を約束するのです。
しっかりとした契約書にしたいのであれば、法律婚の主要な法律上の規定を契約書で定めることも可能です。またあえて法律の原則的な規定を契約書で排除することもできます。
ちなみに、事実婚のパートナーは相続人となれないので、遺言を用意しておくカップルも多いです。

事実婚に関する契約書の詳細については次々回のコラムで記載します。


執筆者:弁護士 松坂拓也
事実婚・婚前契約(夫婦財産契約)についてお悩みの方は弊所までお問い合わせください。

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