【関連コラム】
・事実婚って何?事実婚のメリットとは?
・婚前契約(夫婦財産契約)って何?条項例は?
弁護士の松坂です。
前々回のコラム(事実婚って何?事実婚のメリットとは?)で、事実婚のスタートには、事実婚に関する契約を締結するのもありですと記載しました。
今回は、契約でどんなことを定めたら良いのかを簡単に解説します。
事実婚に関する契約とは
事実婚に関する契約は、事実婚を行うパートナー同士の約束事を決めるものになります。
そもそも事実婚関係の成立に、契約書を巻くという必要はないです。
多くの人は、事実婚関係になると二人の間で約束していたり、対外的に夫婦・パートナー関係にあると表明していたりしますし、夫婦らしい生活を送っていてそれで十分です。
事実婚関係が認められれば、法律婚に準じた扱いがなされます(詳しくは前々回のコラム(事実婚って何?事実婚のメリットとは?)を参照)。
しかし、色々と取り決めたいというニーズは多いですし、しっかりとした事実婚関係の証明として契約を締結したいという人もいます。
また、一方のパートナーに万が一のことがあったときの取り決めや委任・代理権について契約書で定めておけば、第三者に示すことで他のパートナーが代わりに手続きを行えたりすることもあります。事実婚では医療機関が法律婚の夫婦と同様の扱いをしてくれないということを聞いたことがあるとして不安に感じている方もいるようです。絶対ではありませんがで、契約書で定めておけば医療機関との関係で手続きができることがあります。
規定例
では、事実婚に関する契約の規定例はどのようなものでしょうか。
一般的に定められる規定は以下のとおりです。
なお、夫婦財産契約(共有財産や特有財産の範囲など)について取り決めることもありますが、これは前回のコラム(婚前契約(夫婦財産契約)って何?条項例は?)を参照してください。
1.相互の関係の確認及び誓約
まず、お互いが事実婚として社会通念上の結婚と同等の関係を築くことを合意し、家族として支えあうことを合意します。
2.婚姻等の禁止
他の者と婚姻し、また事実婚となることを禁止します。
法律婚でもパートナー以外の人と結婚すること(重婚)は認められていません。
それを明記するわけです。
3.同居、協力及び扶助の義務
法律婚で認められるのと同等の同居義務と協力・扶助義務について規定します。
同居義務については、単身赴任といった正当な理由がなければ同居を拒んではならないという義務になります。
協力・扶助義務は、夫婦が互いに協力して生活すること、夫婦の一方が扶助を必要とするとき(つまり経済的に援助が必要な場合)に他方が扶助(経済的援助)をしなければならないという義務です。
4.不貞の禁止
他の者と性的関係を有することを禁止します。
これも法律婚と一緒ですね。
5.婚姻費用の負担
家族の生活のための費用の分担について規定します。
生活実態は変わっていくため、ざっくりと「協議して都度取り決める」と定めておいて、細かく規定しないことも多いです。
6.医療行為に関する委任事項
最近では事実婚関係を示せれば医療機関がふたりを法律婚としての夫婦と同様の扱いをしてくれることも増えてきましたが、一部の医療機関では、このような扱いをしてくれないというところもまだまだあるようです。
その場合に備えて、事前に一方が他方に対して医療に関する事項について委任や同意しておくことが有用です。
これをしておくことで、相手の意識がない場合にパートナーが意思決定を代わりに行えたり、また必要な説明を受けることができたり、面会が謝絶されるリスクが減ったりします。
7.子の教育監護
また、子供がいる場合/できた場合に備え、子供に関する取り決めをしておくことがあります。
細かく定めることもありますが、多くの場合は将来のことはわからない以上、概括的に法律上規定されていることを規定し、「都度夫婦で話し合う」とだけ規定することもあります。
現時点では事実婚の場合、単独親権となるため、一方が他方に教育監護について委託することや、医療行為が必要となった際の同意する権限を与える旨を明記することで、子の将来必要となることに備えることができます。なお、今後、民法の改正により共同親権を選択できるようになります。
8.死後事務委任
事実婚では相続権がありません。そのため、一方の相続が発生した際にパートナーが必要な手続きを取りにくくなることがあります。
それに備えてどちらかの死後の事務について委任をしておくこともあります。
9.関係解消時の取り扱い
事実婚の関係解消はどちらか一方の意思表示で足りるとされています。
これが事実婚の良い面でもあるし、悪い面でもあります。
ただし、一旦形成された家族関係を解消するとなると、法律婚と同じく様々な清算が必要となりますし、また子供がいる場合には子供をめぐる事項の整理も必要です。
そのため、予め財産分与についての定めや、子供の監護や面会交流・養育費についての定めを置くことがあります。
なお、夫婦財産契約と同様の夫婦の財産の帰属(共有財産とするか特有財産とするか)と財産分与について取り決めをするニーズは特に多く、この定めについては十分に検討のうえ慎重に取り決める必要があります。
契約の仕方
事実婚に関する契約は、どのような方法で締結しても問題ありません。
極論口頭でもよいのです。
しかし、実際に後から簡単に見返せないのは面倒ですし、言った言わないの話となったら細かい取り決めをした意味がありません。
せっかくなら契約書という形で作成するのがオススメです。
形を重視するならば公正証書というしっかりした形にする選択もありでしょう。
ちなみに、これまで事実婚関係では相続が生じないと話してきました。
これに対応するには遺言書を作成してパートナーに遺贈することが一番なのですが、遺言書は形式がとても大事で事細かに様式が決まっていますので弁護士などの専門家にご相談ください。
実際作成するにあたって
インターネットで「事実婚 契約書」「遺言 書き方」などと検索すると、事実婚に関する契約書や遺言書のひな形がいくつかヒットします。
ネット上の雛形を用いて契約書や遺言書をご自身で作成することも私は大賛成です。
しかし、夫婦の形は千差万別で、またここには書ききれなかった様々なややこしい法律的な話が事実婚と相続との両方にあります。
きちんとしたものを作りたい・弁護士によるアドバイスを踏まえてしっかり理解して作りたいという方は、一度当事務所までお問い合わせください。
執筆者:弁護士 松坂拓也
事実婚・婚前契約(夫婦財産契約)についてお悩みの方は弊所までお問い合わせください。