Column

【刑事弁護】逮捕・勾留段階で実名報道を行う意義はどこにあるのか

少年法が改正され、18歳か19歳の少年は、起訴された際に実名報道が可能になりました。
この点について法務省は「少年法が変わります!」において「選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げにより責任ある立場となった特定少年については,起訴され,公開の裁判で刑事責任を追及される立場となった場合には,推知報道を解禁し,社会的な批判・論評の対象となり得るものとすることが適当であると考えられたことによる」と説明しています。

ところで、20歳以上の場合には、しばしば、逮捕された段階から実名報道がなされます。
氏名や住所や逮捕された事実だけでなく、逮捕された方がどのような供述をしているのかも報道されます。
時には、どんな証拠があるのか、さらには逮捕された方のプライベートも報道されることもあります。

でも、ここで皆さんに考えてほしいのです。
逮捕された方や勾留された方は、本当に犯人だと断定できるのでしょうか。
逮捕や勾留は、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があればできます(刑事訴訟法199条1項等)。
捜査機関が逮捕や勾留をして、その間に証拠を集め、その後起訴し、刑事裁判を行い、裁判官や裁判員が「犯罪の証明があった」と判断して有罪判決を言い渡し、その判決が確定して、初めて「罪を犯した」ものとして刑罰を科すのが、現在の刑事裁判の手続なのです。
逮捕や勾留をされたけれども、結局起訴されなかったという例は、珍しくありません。
例えば2021年12月の検察統計を見ますと、既済被疑者94,596人に対し、嫌疑不十分による不起訴となった方が6,076人(被疑者数の約6%)います。
嫌疑不十分による不起訴の中には、実際に罪を犯したけれども証拠がないという方もいれば、本当に罪を犯していないという方も相当数います。
繰り返しになるのですが、逮捕された方や勾留された方は、罪を犯したと疑われているだけにすぎず、実際には犯人でない方も逮捕され、勾留されているのです。
逮捕や勾留は、このような制度なのです。

とすると、罪を犯したと疑われているにすぎない逮捕・勾留段階で、実名報道を行う価値はどれだけあるのでしょうか?
まして、その方のプライバシーまで根掘り葉掘り報じる必要性はどこにあるのでしょうか?

逮捕・勾留段階の意義についての理解が広がることで、実名報道が本当に必要なのかどうかが見直されるのではないか、と個人的に考えております。

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