前回の記事:被包括関係廃止(単立)の手続
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前回(【宗教法人】包括宗教法人と被包括宗教法人②被包括関係廃止(単立)とは(手続総覧))は、被包括関係廃止の手続全般を説明しました。
前回のコラムでも書いたように、被包括関係廃止とは包括宗教法人にとって大きなインパクトとなる出来事であり、紛争となることも少なくありません。
具体的には、包括宗教法人が被包括関係廃止を阻止しようとして妨害を行ったり、後から廃止手続きが無効であったと主張してきたりする例が散見されます。
今回のコラムでは、被包括関係廃止における法的紛争事例と被包括宗教法人の保護を紹介します。
被包括関係廃止(単立)とは、包括宗教法人からすれば自らの派閥から脱退が起きるということになります。
包括宗教法人としてこれは看過できないこともあり、どうにかして阻止したいと考えることが珍しくありません。
包括宗教法人としては、まず、被包括関係廃止手続きに誤りがあったとして当該手続きの無効を主張してくることが考えられます。
そのため、誤りのない手続きを確実に、かつ包括宗教法人に妨害されないようにできる限り秘密裏に準備・実行する必要があります。
また、多く場合、代表役員等の選解任手続きや懲戒手続には包括宗教法人が関与することとなっています。
そのため、包括宗教法人からすれば、被包括関係廃止の計画を知った場合、被包括宗教法人の代表役員を懲戒処分とし解任するなどし、代表役員が被包括関係廃止の手続きを進められないようにするなどの妨害を行ってくることがあります。
そこで、宗教法人法は、被包括関係の廃止を防ぐことを目的として又はこれを企てたことを理由(以下「廃止防止目的」といいます。)として、被包括関係の廃止の通知前に又はその通知後2年間、代表役員等の権限に制限を加えたり、不利益の取扱をしたりしてはならないと規定しています(宗教法人法78条)。
これによって、被包括宗教法人は、包括宗教法人から妨害されることなく、被包括関係廃止の手続を遂行できることになります。
しかし、被包括宗教法人が被包括関係廃止の手続きを進めていたとしても、廃止防止目的とは別の正当な処分理由があれば包括宗教法人が懲戒処分を行うことまでは制限されないと解されています。
過去の裁判例においても、包括宗教法人から代表役員に対する処分は廃止防止目的でなされたものであり無効な処分であるのか、それとは別の正当な目的で行われたものであって有効な処分であるのかが争点とされ、当該処分の効力が争われています(例えば、盛岡地方裁判所判決平成9年2月7日、札幌地方裁判所判決平成9年9月19日、最高裁判所判決平成12年9月7日など)。
そのため、被包括関係廃止の手続は、可能な限り秘密裏に行う必要があり、また包括宗教法人から廃止防止目的以外の別の正当な目的での処分をなされてしまう余地を与えないことが重要となってきます。
包括宗教法人からの妨害リスクや法廷闘争に持ち込まれるリスクを無くすためにも、被包括関係廃止のお手続きには、弁護士が関与することが望ましく、構想段階からのご相談をおすすめします。